働き方改革で注目される社労士の仕事や業務内容について解説
働き方改革が徐々に進められ、会社でも変化を実感する人が徐々に増えています。
労働環境の改善を目的とした働き方改革に大きく関わる職業のひとつが社会保険労務士、いわゆる社労士です。
その仕事や業務内容、働き方改革との関わりなどについて解説します。
働き方改革とは?
最近耳にすることが増えた働き方改革は、労働法を改正し労働環境を改善することを目的に定められた法律で、2019年(平成31年)4月1日より順次施行されているものです。
正式名称は「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」、略称を「働き方改革関連法」や「働き方改革一括法」などといいますが、いずれも一般には【働き方改革】呼ばれているものです。
この法律が生まれた背景には長時間労働による過労死問題や雇用形態によって生じる格差、労働生産性の低下などがあります。
働き方改革では次の項目が3本の柱として掲げられています。
これらを実現するために必要になってくるのは長時間労働の抑制や有給休暇取得の義務化、待遇に関する説明義務の強化などの対策です。
働き方改革ではこうした対策を企業に義務付けるための働きかけが行われています。
働き方改革の実現に深く関わる、社会保険労務士
働き方改革を進める上で重要な役割を担っているのが社会保険労務士、いわゆる社労士です。
8士業の1つである社労士は企業の労務管理や社会保険などに関する相談対応、指導といった業務を行うための国家資格を有する人を指します。
社労士の主な業務内容は次の3種類です。
この3種類の業務は上からそれぞれ1号業務、2号業務、3号業務と呼ばれることもあり、1号業務と2号業務は社労士独占業務といって社会保険労務士にしか行えない業務です。
それではそれぞれについてもう少し詳しく解説しましょう。
申請書等の作成および提出手続きの代行
行政機関へ提出する労働保険や社会保険、厚生年金関連の申請書や届出書などの作成、提出代行を行います。
労働社会保険や厚生年金に加入することは企業が負っている重要な責務のひとつであり、労働するうえで発生し得る様々なリスクから従業員を守るために極めて大切なものです。
しかし制度の複雑化に伴って手続きも煩雑になっており、申請書や届出書などの書類作成には人件費や時間といった多大なコストがかかります。
作成した書類の内容や手続きに不備があると保険料の追徴金や延滞金が課せられる場合もあるため、作業は細部にわたるまで高い精度で行うことが求められます。
社労士はこれらの書類作成にかかるコストを大幅に削減しながら的確かつスムーズに手続きを行い、企業の経営をサポートしています。
労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類の作成
2号業務では次の書類の作成が主となります。
- 就業規則
- 労働者名簿
- 賃金台帳
- 就業規則は賃金や時間、休日といった労働条件の詳細を労働基準法に基づいて定めた規則のことで、会社におけるルールブックのようなものです。
- 労働者名簿は労働者の氏名や年齢、生年月日、住所や雇入年月日といった属性をまとめた書類で、正社員やパート、アルバイトなどの雇用形態に関わらずすべての労働者を対象に記載する必要があります。
- 賃金台帳は賃金を支払うすべての労働者に対して作成する書類で、労働日数や労働時間、基本給やその他手当の額などの情報を記載する書類です。
労働者名簿と賃金台帳は出勤簿と合わせて事業場に備えておかなければならない法定三帳簿と呼ばれています。
労務管理に関するコンサルティング業務
人事や労務管理に関する相談対応、指導などのコンサルティング業務がいわゆる3号業務と呼ばれるものです。
主には雇用管理や人材育成、賃金や労働時間に関する対応を行っています。
特に近年は不況で派遣社員や契約社員、アルバイトなどの非正規雇用と呼ばれる雇用形態が多くなり、そうした雇用についての相談が増加傾向にあります。
また1号業務や2号業務で扱う書類や現在の運用状況についての監査を行ってコンプライアンスの向上やトラブルの防止に貢献する経営労務監査も、コンサルティング業務の重要な一面です。
3号業務は社労士独占業務ではありませんが、知識だけでなく豊富な経験が問われる業務といえるでしょう。
今後ますます重要になる働き方改革
働き方改革で政府からいくら改善策が打ち出されたところで、それが各企業に徹底されなければ何の意味もありません。
2017年までに継続して行われたある調査では、働き方改革が進んでいる実感が得られた一方で、7割を超える企業が従業員の満足を得られていないという結果が出ています。
改革が実施されていることやその実感が得られたことは前向きに捉えられる部分ですが、やはり従業員の満足度が上がらなければ十分とはいえません。
こうした状況を踏まえ改革を着実に進めていくために、労務管理のエキスパートである社労士の存在は欠かせないのです。
社会保険労務士と働き方改革のまとめ
働き方改革は労働法を改正して労働環境を改善することを目的に定められ2019年4月より順次施行されている法律です。
長時間労働の抑制や有給休暇取得の義務化などの対策が取られていますが、まだまだ十分ではありません。
企業の労務管理や社会保険に関する相談対応や指導などの業務を行う社労士は働き方改革を進めていくうえで欠かせない存在です。
今後も社労士に対するニーズは高まっていくことが予想されます。