司法書士から企業法務に転職する際に必要なスキルや経験は何?
司法書士の中には、企業法務への転職を考えている人も少なくないと思います。
司法書士事務所に勤めていても年収が大企業の会社員に比べて決して多いわけではなく、独立して事務所を開業するのは経営能力が必要でリスクも高いことから、法律の知識を活かして安定した大企業に転職したいと思うのも無理はありません。
それでは、司法書士が企業法務に転職する際、どのようなスキルや経験が必要なのでしょうか。
意外に高い、企業法務のハードル
ある会社が仮に企業法務の求人募集をしていたとしても、司法書士は法律の専門家だからといって、必ず採用してもらえるわけではありません。
そこには、意外に高いハードルがあるのです。
企業法務と司法書士は兼務できない
司法書士が企業法務になるためには、司法書士法の壁が立ちはだかります。
司法書士法の一部を要約すると、以下の通りになります。
つまり司法書士には事務所が必要となります。
要するに、企業に勤めるということは、事実上は司法書士であることを放棄しなければなりません。
もちろん企業に勤めながら司法書士事務所を経営する、あるいは勤務司法書士を続けることを会社が認めてくれれば別ですが、そんなことはまず望めないでしょう。
また司法書士は、依頼があれば断ることはできないとあります。
企業法務に勤めながら、依頼を選り好みしないということはまず無理でしょう。
社会経験が少ない司法書士
司法書士になるためには、難しい国家試験に合格する必要があるので、学生時代は勉強漬けになるものと思われます。
あるデータによると、司法書士試験の合格率は僅か3パーセント前後です。
学生時代から司法書士を目指している人は、司法試験書士試験に合格し、司法書士事務所に採用されると社会経験の全くないまま司法書士になります。
法務事務所と一般企業では業務や仕事に対する考え方が全く異なるので、たとえ転職に成功しても長続きしない場合が多いようです。
司法書士の中には、仕事をしながら勉強して試験に合格する人もおり、その場合では社会経験は豊富です。
しかし、そういう人はそもそも司法書士への転職を考えており、司法書士から企業法務へとは逆のコースでしょう。
企業法務に必要な経験およびスキル
社会経験に乏しい人が転職するのはデメリットでもあるのですが、企業が法務部の求人募集をしているということは、法律に詳しい人を探していることになります。
その中には、司法書士が得意とする業務もあるでしょう。
企業法務に有利な資格
企業法務に転職するためには、以下のような資格があれば良いと思われます。
- ビジネス実務法務検定
- ビジネスコンプライアンス検定
- ビジネス著作権検定
これらの資格が全て必要というわけではなく、会社が求める業務に合わせた資格があれば有利となるわけです。
不動産登記に関する業務
司法書士が最も実力を発揮する部門は不動産関係です。
司法書士と言えば不動産登記というイメージがあるぐらいですから、もし企業の法務部が不動産関係に関する人材を求めている場合は、司法書士の肩書が大きくものを言うでしょう。
ただし、リーマンショック以降では不動産業務はかなり減っています。
しかも人口減により、なかなか住宅開発も進まないと予想されるので、不動産業務は狭き門となるかも知れません。
今後ますます叫ばれる、コンプライアンスの重要性
昨今では法令遵守、いわゆるコンプライアンスの重要性が叫ばれています。
この傾向は、ますます強まるでしょう。
そういう職種で強みを発揮するのが、司法書士など法律のプロです。 特にコンプライアンス関係に強い司法書士事務所に勤めていれば、そのスキルが企業法務に活かされるでしょう。
これまでは法務部と言えば大企業に限られていましたが、コンプライアンスに関しては中小企業にも広がっていく可能性があります。
その際にも、法律に違反しているか否かを精査するという、司法書士での経験が役に立ちます。
認定司法書士であれば有利
司法書士の中には、法務大臣から認定された認定司法書士がいます。
認定司法書士は、訴額が140万円以下だったら、簡易裁判所で代理人を務めることができます。
普通、裁判になれば弁護士に代理人として依頼しなければなりませんが、訴額が140万円以下で簡易裁判所ならば認定司法書士でもいいわけです。
司法書士事務所で訴訟での実績があれば、その経験は企業法務でも役立つでしょう。
司法書士の転職まとめ
一口に企業法務と言っても、会社が求める業種には様々な種類があります。
ただ単に、自分には法律の知識があるから企業法務の仕事もこなせるだろうと安易に転職してしまうと、失敗する可能性が高くなるでしょう。
まずは企業法務の人材を求める会社の状況を調べ、どういう業種に関する求人なのか、その業務は自分が行ってきた司法書士の経験が活かせるのかを考えてください。